2,715回例会　2013.01.25（金）　　No.2,606

解説すると「前輩、嘗て説く、後生の才性人に過る者は畏るるに足らず」は、人間の本質をなすものは徳性があり、いろいろの知識・技能はその属性です。つまり、頭が良いとか文章が上手いといった才能の優れた者は決して畏れるに足りないということです。 　「惟だ読書尋思推究する者畏るべしと為すのみ。また云う、読書は只尋思を怕る」の尋思は深く思いをめぐらすことで、怕るは肝腎という意味ですから、読書は深く思いをめぐらすことが肝要であるということです。読書というと先日はセンター試験がありましたが、国語の平均点が大きく下がったとの報道がありました。それは出題の小林秀雄の「鐔（つば）」という文書が大変難しく、読んで内容を見るだけで２０分以上かかるそうで、受験生も深く思いをめぐらせる時間がなかったのでしょう。 　「蓋し義理の精深は、惟だ尋思し、意を用いて以て之を得べしと為す」の義とは如何になすべきかという実践的判断で、理はその意味、法則です。義理が深いかどうかをよく考え、心を動かし初めて遂げるもので、昔の人は良く泣いたといわれますが、まさに深く心を動かしたことなのかもしれません。 　「鹵莽にして煩を厭う者は決して成ること有るの理無し」の鹵莽は穴だらけ、節だらけで整理整頓ができていない雑駁な状態をいいます。つまり、乱雑、雑駁で手間のかかることを嫌がるような者は決して立派な人間にはならないということです。 　最近は便利になりましたが我々はその暇な時間をどのように使っているのか、手間の掛かることをきちんとやって成長しているのか、を考えると少々避けていたのではないかと反省する毎日です。