藤森貞雄職業奉仕委員長
10月の奉仕月間で担当例会を実施する予定であったが、いろいろな調整で今月となった。あるPJの関係で山崎壯一会員を訪ねた時、すごいことをやっている会社があることを聞き、例会で発表してもらいたいと考え、委員会に諮りお願いした。サンメディカル研究所は、日本で初めての人工心臓を作っている。日本には、5千人位の末期患者が心臓の提供を待っている。なかなか提供者が現れなくて、毎年何千人も亡くなっている状況にある。このような世界的な開発が日本で行われ、これはまさに画期的な職業奉仕であると考える。
山崎俊一社長 サンメディカル技術研究所長(代表取締役社長)
http://www.evaheart.co.jp/index.html
サンメディカル技術研究所は、諏訪から育った高度な医療ベンチャー企業です。CTスキャンのような検査機器や体内埋め込み型の治療機器は、日本製はほとんどなく、ペースメーカー、人工弁、人工血管すべて外国製という現状です。
1991年に創立し、17年間に渡り開発してきて、現在は人へ応用している試験段階です。
飛行士チャールズリンドバーグは、大西洋横断冒険飛行の後、医療機器の研究に携わったエンジニアです。ノーベル医学賞をとった医学者(カレル)と人工心肺を世界で初めて開発しました。これにより、血液を対外に循環させ加酸させることができ、心臓手術が可能となりました。60年前ロックフェラー財団がスポンサーとなり開発しました。2000年に米国で第一世代の人工心臓の効果を検証した。
末期患者 補助心臓68名、薬物治療61名の比較は
1年目は薬物治療の延命率25%、補助心臓の延命率52%
2年目は薬物治療8%、補助心臓23% です。
第一世代の開発品は、大型のものであったが、今回の開発の「EVAHEART:「永遠なる心臓との共生・融合」の願いを託し命名」は小型、軽量です。(400g)
開発のきっかけは、1990年学会中に山崎健二医師が突発的に思いついたことです。
諏訪における開発で有利なことは、諏訪は東洋のスイスと言われた小型精密機器・機械加工技術が発展していたことです。また、グループとしてミスズ工業は部品機械の加工技術があり、エプソン社の協力もあったことです。
理論としては、流体工学・生体工学・トライポロジーがありますが、製品開発と同時にできました。また、1993年山崎医師が米国ピッツバーグ大学に留学し、研究に専念できたこともあります。
技術のブレイクスルーは、回転軸の血流シールです。血液は、外気に触れたり狭いところや暖かいところでは、固まるため、回転しているシールが焼き付いてしまいます。これは、当時学会では、絶対解決できないと言われていました。しかし、構造上クリアする必要があり、これらは、水の循環により解決することができました。水がポンプの中をぐるぐる回り、シール部分まで行き洗い流すことで凝固しにくくしました。特徴としては、シール部の冷却、モーターの冷却、すべり軸受けの循環部分です。また、センサーや電子部品を一切不要としました。電子部品は故障があるため、寿命に影響します。
1997年、Cool Sealシステムの実験では、6ヶ月の長期生存を達成しました。これにより、科学技術振興事業団の開発委託が決定し、6年間で10億円の予算が付きました。
1998年、植込型補助人工心臓の製造承認取得のため、サンメディカル新工場をミスズ工業となりに建設し、設備設置しました。これにより、EVAHEARTが研究開発段階から臨床開発段階へ移りました。人体実験に入るまでには、可視化(CDF)をそろえる必要があり対応しました。
病院治療から在宅治療、そして社会復帰まで考えるとコントローラーの小型化、軽量化、携行型が必要であり、当初は25kあったものから4.3kに改善しました。
高度医療機器では法規制がありますが、高品質な体制で対応しました。本開発品は、小型・長期信頼性・世界一のポンプ能力・携行小型のコントローラー・連続10時間のリチウム電池を搭載しています。全体システムの耐久性は、18台4年経過して故障なしであります。(設計耐久性は20年)
生体安全性試験もすべて陰性です。長期稼働試験を東北大学で行い823日の世界記録を達成しました。試験を止めたのは、埋め込んだヤギが腎不全で亡くなったからです。
今後は、パイロット試験と本試験(埋め込み終了して6ヶ月)が終わり、今年末か来年始めに、厚生労働省へ製造販売許可を申請して、1年位かかり承認となる予定です。
試験の成績は、世界一良い結果がでているので、問題なく承認されると思っています。また、米国の治験は来年から始まり、欧州、中国では、来年か再来年に向けて治験が始まります。
末期の患者さんの例としては、術後26日経過後に一人で立ちあがることが出来、1ヶ月で散歩が可能となりました。
パイロット治験の例(3名)(2005年)
1例(46才男性):3年5ヶ月経過して社会復帰している。
2例,3例(26才男性、40才女性):3年以上経過後、心臓移植した。取り出したポンプを分解したが、新品同様であった。 また男性の患者さんは結婚もした。
EVAHEARTの生存率 6ヶ月89%、12ヶ月後82%、24ヶ月後72%、36ヶ月後72%で亡くなるのは、ポンプの故障でなく、合併症が多い。他社のポンプの生存率は、50%(1年のデータ)。
EVAHEARTは、心臓移植と同等の生存率です。ドナー不足であり、心臓患者は増えているなかで、最新の医療手段です。
マーケットとしては、年間世界で20万人、少なく見積もり2万人として、年間1万台のシェアを獲得しようと考えています。1台1390万円(日本)、米国800〜900万円、欧州は米国より若干高めであす。ICD(除細動器付きペースペーカー)等の先端高度医療機器は、倍々で伸びています。2006年13万台で、今では20万台を越えている状況です。末期患者は薬物では限界で、助けるには、心臓移植しかありませんが、提供者がいません。今後は、こうした機器が必要となると考えています。
まとめとして、
・治験18例とも良好です。今年度中に販売申請を行います。
・米国では、異例のパイロット試験は省いて、本試験から始まる予定です。
・ポンプ能力が高いため(他社の2倍)元気になるのも早く、高いQOL(quality of life)を有しています。
・こうした新しい方法は、今後10年で確立する。
・EVAHEARTの研究、開発、臨床実験を通して、一研究所から医療機器開発メーカーの扉を開きました。
藤森貞雄職業奉仕委員長
この成果を聞いて、山崎一族の3本の矢を感じました。サンメディカル研究所・医師・ミスズ工業の三本の矢の力です。これは、地方から世界へ誇れる開発だと思います。今日は、ありがとうございました。